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903年,この年アメリカのライト兄弟が初めて空を飛びました。それ以前1891年ドイツでは,リリエンタールがグライダーで空を飛びましたが,ライト兄弟の発明した飛行機は12馬力のガソリンエンジンをつけて,12秒間,36メートル飛んだのでした。人間は大昔から空を飛ぶ夢を持っていて,それは誰もが永遠にいだいていた夢でした。天空を舞う鳥達の様に美しく羽を拡げ,飛ぶことの出来る魚はトビウオだけです。青い海面を舞うその華麗な姿は,船上で出会えた人に最高の感動を与えます。
トビウオの英名はやはり飛ぶことからフライングフィッシュです。和名の別名では「つばめ魚」と言います。トビウオは日本の近海に30種類以上いますが,食用となるのは数種。胃が無く腸も短く,内蔵が軽くて体重が少ないため,飛ぶことが出来るのです。また,背部が青黒色で全体にシルバーに光り輝くボディーは円筒形に近く,輪切りにした断面は逆三角形をしています。そして無色透明の長く大きい胸びれと腹びれは,翼としての機能を持っています。尾びれの下の部分も長く伸び,この部分で水面を切って滑空のための推進力をつけるのです。はじめは,水面すれすれを全速力で泳ぎ,胸びれを拡げ,尾ひれ尻びれで水面をけり,水面上2〜5メートルの所を50〜400メートル程滑空します。滞空時間は42秒という記録があります。
トビウオは温かい海を好み,本州中部以南から沖縄まで分布し,春と秋の2回産卵します。旬は初夏と言われていますが,市場には春頃から伊豆七島出身のトビウオが出回ります。トビウオの種類はホントビがポピュラーですが,他にカクトビ・ハルトビ・アオトビ・アカトビ等,最大級は,50センチに達するハマトビです。山陰や北九州ではトビウオを「アゴ」と呼びますが,ここでは名産の竹輪にされています。伊豆七島のホントビのクサヤは珍味中の珍味と言われ,干物・クサヤなどの加工品はとても美味です。
ウロコ落ちのない黒く大きく澄んだ瞳のトビウオ,ピカピカの鮮度の良いものはなんといっても薄くそぎ切りにしお刺身が最高。また包丁でトントンと何回もたたき,みそ・ねぎ・ニンニク又はしょうが汁を加えたたたきは,骨を気にせず食べられて美味。たたきを温かいご飯の上にのせ,お茶や味噌汁をかけて食べるとさらにおいしく,このトビウオの漁師版の食べ方(なめろ)は一度トライして見たいものです。他に塩焼き・衣揚げ・つみれ汁・フライ、工夫しだいで味もぐんとアップします。
トビウオの魚肉には骨が多くカルシュウムが豊富です。またビタミンEの50倍の効力があると言われるセレン(ミネラル)を多く含んでいます。このため昔からトビウオは安産催乳に効果があり,血行を良くし,若返りには最高の魚であると言われています。
トビウオはたしかに脂肪が少なく,淡白であるという短所を持っていますが,ダイエット・若返りに良いという長所を持っています。それに泳ぐだけでなく,自力で空を飛ぶことが出来るなんて,なんとすばらしい魚なのでしょう。
春4月,授業をエスケープしパチンコ,マージャンとビリヤードに明け暮れた大学生活に別れを告げ,社会に飛び立つ人もいるでしょう。ビジネス・留学・旅行のための飛行はいいけれど,非行と逃避行はあまりおすすめ出来ません。
ところで,なわとび・とび箱・走り幅とび等,他にもとびあれこれとありますが,こちらのトビもダイエット・若返りに充分効果があると思います。日本では「とんびに油揚げをさらわれた」とか,「とんびがタカを生んだ」とか,たとえられています。鳥の世界ではとんびもタカも同じわしたか科に属し,空を飛んでいる限り上下関係は無しと思われます。しかし人間の見方はとんびよりタカが優秀であると判断しています。飛行速度,その他いろいろ考慮して,鳥達の偏差値を出したところで,ワシもタカもとんびも皆同じかわいい(?)鳥達に見えるものです。とんびがタカを,タカがとんびを生んだとしても,能ある者は,つめを隠して。学校の成績も営業成績も低空飛行は上昇気流に乗りたいものです。
とびきり上等のワインを飲みながら,金曜日(フライデー)には,トビ魚のフライを食べましょう。食事の時に流れるB・G・Mは「フライミートーザムーン」。ロケットに乗れば月へでも飛んでいける現代ですが,明日へのとびらを元気よく開け,常に理想と美を追求し,エンジン全開で生きてゆけたらすてきでしょう。そしておしゃべりで口うるさい女性の目ざす所は,サイレントビーナスといったところでしょうか???(K・F)
横浜魚市場卸協同組合 |