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平成11年1月,めでたき初春の慶びをかわす年の始めにふさわしい動物といえば鶴と亀。そして今年の干支はうさぎ。うさぎとカメの話はあまりにも有名で,どんなに時代が変わろうとも幼い子供達に語りつがれています。今は何でもスピーディな時代,速さが勝負なのは市場世界でも同様ですが,やはり「スローエンドステデイ」ゆっくりと着実の言葉は大事です。うさぎのように生きるのもよし,カメのように生きるのも自由ですが,浦島太郎を竜宮城へ乗せていったのはイルカではなくカメ。「鶴は千年カメは萬年」の言葉よりカメは慶事を飾る永遠不滅のシンボルです。
さて、今月号のメインキャスターはカメならぬスッポンです。姿はめでたきものでないけれど,萬年とまでは生きないけれど養殖物でもめったに死なない強者です。丈夫で長生きのスッポン,天然の寿命はなんと百年ぐらいです。また、食べて味良し体に良しのスッポン,日本でも古くから高級料理に使われ,血は強壮剤で肺患の特効薬とされていました。スッポンの生息地はかなり広く,シベリアからアフリカ・台湾・中国などで,日本では四国・九州にまだまだ生息しています。しかし明治時代以後は非常に少なくなりました。ですから天然産は市場には全く見られません。
スッポンは淡水性で砂泥質を好み,沼や川にいます。そして基本的には水中で生活し,天気の良い日には陸に上がって甲羅ぽしをすることがありますが,昼間は水中にひそみ夜活動しています。スッポンの性格は,実に憶病なのです。「スッポンは一度食いついたら雷がなるまで離さない」と言われていますが,これは強暴ではなく,恐さからの自己防衛本能によるものです。スッポンには歯がないのですが,あごが非常に強くかまれた時は,水の中に入れてやれば安心して離すのです。
スッポンの名前の由来は川に飛び込んだ時のその音を表すことから来ていますが,地方によっては「カメ・ドウガメ・川カメ」などと呼ばれています。スッポンはカメの仲間であるけれど,首がカメとちがって良くのぴます。また,カメの甲羅には六角形の連続模様があるが,スッポンにはありません。スッポンは20度から30度の温かい温度でないと成育しませ。15度以下になると餌を食べなくなり,10度以下では冬眠してしまいます。ですから日本の天然物は半年も冬眠していることになります。冬眠から覚める4,5月に交尾し6月から8月にかけて陸上で産卵します。
日本でのスッポンの養殖は明治時代から始まりましたが,ポイントは何といっても温度にあります。オス・メスの比は1対1でも2対5でもOKですが,水温を30度前後に保つことにより一年中冬眠せずに餌を食べます。天然ですと4,5年かかる大きさに,養殖だと1年でなるのです。餌はタニシ・エビ煩・小魚などですが、1年で5,6回産卵し44日位でふ化します。
さて,中国では四千年も前よりスッポンが漢方薬・薬膳とし,愛されてきました。日本でもスッポン料理は最高に美味とされ,鍋物・雑炊・煮込み・刺し身・唐揚げ・串焼き等,いろいろに料理されています。しかしスッポンの最大の魅力はその効用にあります。今回スッポンを書くにあたり医学雷のコーナーで山会い参考にしたのは長瀬元吉著の「スッポンの挑戦」という本でした。
この本によると,スッポンには優れた浄血能力があります。スッポンに含まれるアミノ酸中グリンンは血液を浄化し,ヘキサデセン酸やエイコサペンタエン酸は,悪玉コレステロールを除去します。スッポンはアミノ酸の宝庫で,20種類あるアミノ酸のなんと全種類が含まれています。またミネラルもビタミンA・B・C・D・E,そしてカルシウムも多く含まれています。そのすばらしいパワーは糖尿病・心臓病・老化防止・美容・滋養に驚くべき効果があるのです。
実は私も市場でスッポンを扱っていますが,かつて箱をくいちぎり,2匹のスッポンが脱走したことがありました。スッポンの逃げ足はとても速く,とてもカメとは思えぬスピード。一ケ月後にやっとつかまえましたが,その生命力とパワーに驚くばかり。スッポンのすばらしさを知り,食べてみようと思うのですが,毎日は食べられず。しかし本の著者長瀬さんは奥飛騨の平湯温泉でその水温を利用しスッポン4万尾を養殖しています。その長瀬さんが健康食品として関発した「スッポン球」があるのです。スッポン全身を蒸し焼さにし,粉にしスッポンオイルと混ぜた「スッポン球」,早速注文し毎日飲んでみることにしました。市場の寒い冬を乗り切るために,老化を防ぎスッピンの肌も美しく輝きますように,高価でもその効果を幸か不幸か期待して,スッポン料理に挑戦してみましょう。
デートの相手はジエームスッポンド。スッポかされてもかみつかない。愛すべきはカレよりかカメ,カメよりスッポンなのかも知れません。カメの甲より年の功,美しく年を重ね,カメばかむほど味の出る,そんな人間になりたいものです。(K・F)
横浜魚市場卸協同組合 |