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サンバのリズムに酔い踊るサマーナイト,暑い夏は終わりを告げ,オータムセレナーデが流れる季節が,やって来ます。「サマーサンバ」のメロディーはすてきですが,「サマーのサバ」より美味なのはオータム=秋のサバ。秋ナス・秋カマス・秋サバは,いずれも秋になると美味しくなるので「嫁に食わすな」と言われているのです。
日本海産の「春サバ」は味が良いのですが,春サバは総じて産卵のため脂が落ちて水っぽく,産卵後,えさを食べ込んで秋には脂がのり,丸々と太ってくるのです。ただし横腹にゴマを散らしたような黒い斑点がある「ゴマサバ」の旬は夏。優等生の真サバと違い劣等生のゴマサバは一年中味が落ちないのです。
さて,サバは魚偏に青とかきますが,その「鯖」の字に表れている通り,お腹は銀白色で背は青黒色の斑紋があります。日本ではサバは体色が青系統の魚の代表選手ですが,中国では青い魚=青魚(チンウイ),鯖(チン)と言えば,コイ科の魚なのです。スズキ目サバ科の魚は,Lサイズのマグロ類,Mサイズのカツオ類,Sサイズのサバ類と,大きく分けられますが,サバ科は10属に分類されサバ属には真サバとゴマサバの2種類がいるのです。
サバは,日本各地の沿岸・千島列島・朝鮮・台湾などに広く分布し,黒潮(暖流)の好きな回遊魚で,南北を沿岸沿いに回遊をくり返す特徴があります。日本沿岸のサバ達はそれぞれ異なるルートで,本州沿岸系,朝鮮東沿岸系,日本海中央系と,3つのグループがあるのです。サバの動作はスピーディーで,遊泳力は抜群,魚食性は非常に強く,海洋生物の食物連鎖の中ではトップに位置する魚なのです。
ところで,昔から人間の食生活を支えてきた大衆魚であるサバ,現代でもサンマ・いわし同様,日本の家庭では人気が高いポピュラーな魚です。七輪で魚を焼いていた古き佳き時代は過ぎ去り,都会のマンションでは焼き魚は敬遠され,たばこの煙は愛されても魚を焼く煙は愛されない今日この頃,大衆魚の割には値段は高く,特ににおいの強いサバはとても肩身の狭い魚です。その上,内臓内には,強い消化酵素があるために死ぬとすぐ分解し鮮度がすぐ落ちてしまい「サバの生き腐れ」と言われる通りです。またサバにはヒスチジンという成分が非常に多く,これが酵素によってヒスタミンに変化しアレルギー体質の人にじんましんなどの中毒反応を起こさせるのです。この様にマイナスイメージの強いサバですが,実はとっても優れ者。サバには動脈硬化やコレステロール等の成人病の原因をやっつけるエイコサペンタエン酸(E・P・A)という善玉成分がたっぷりはいっているのです。
味よし・体に良しのサバですからやはり賢い主婦の味方,とにかく新鮮な魚を選ぶことが大事。黒いひとみのつっぱったボディのでっぷり太ったサバを選び,しょうが・味噌・カレー粉・酢などで生臭みをとばし,変化に富んだ料理方法を工夫しおいしく楽しく食べましょう。しめサバ・塩焼き・味噌煮・竜田揚げ・フライ・マリネ・バター焼き・船場汁。大阪のバッテラずし・奈良の柿の葉ずし・福井のなれずしなど,酢でしめて保存性を良くしたサバずしは日本各地にあります。生食でも船場汁のような澄まし汁でもサバの生臭みを感じさせないためにはたっぷり塩をし,良くしめる事が大事なポイントです。
ところで,数をごまかすことを「サバを読む」といいますが,これは市場に入荷した大量のサバを,いたみが早いため目にも止まらぬ早さで数えあげて売ったことからというのが有力説。また,昔,魚市場で小魚を数える時の口調を魚市場(いさば)読みといって,数をごまかされてもわからなかったという説もありますが,どちらにしろ正直に数えられていいのは魚の数。サバを読んでも読まれても悪とは言えないのは女性の年。どうせ読むなら1歳2歳ゴマかすよりは,10歳位サバを読んだ方がサバっとして気持ちが良い。
今,「時サバ」「関サバ」のように,高級で価格のはるサバいばる時代,砂漠のような大都会の生活の中にもオアシスは存在し,新鮮な魚を毎日食べてこそ,サバけた人間が出来上がるというもの。漁獲量が減りながらも大衆魚の青背の魚の四天王の座を守っているアジ・いわし・サバ・サンマ。包丁さばきも鮮やかにかしこき主婦は大いに魚料理を作り家庭の味を守っていきましょう。病は気から,病は口から,美と健康を守るのは毎日の食生活が大事です。
包丁さばきは料理人なみ,ハンドルさばきはレーサーなみ,法の裁きは,出来ないけれど,サンバを踊ればダンサーなみ,思っていても年はゴマかせない。
鮮度が落ちたらダメなのは皆同じ,魚も活き,人間も粋きが大事なのではないでしょうか。(K・F)
横浜魚市場卸協同組合 |