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子供や学生にとってはうれしい夏。海や山に楽しいけれど、日本の夏はとにかく暑さがきびしいです。この暑さを乗り切るにはオバケ・怪談・怖い話がいちばん。お魚あれこれ・今回は読んだら寒くなるという怖い魚についてです。怖い魚と言えばトップスターは何といっても「サメ」。「サメ」は「フカ」とも呼ばれ、堅牢な体と強大なあごにより「人食い」のイメージを思わせ、海のギャングとして海洋に君臨しています。「サメ」は南北両半球の全海域に広く分布し、表層から水深300メートル位の深さにまで生息しています。また、日本近海にも多く、市場にもサメの肉は入荷しています。
北洋サケマス流し網漁業において最も多くとれるのが「ネズミサメ」で、凶暴で商品を食い荒らす悪者として目のかたきにされています。そのため北海道ではほとんど水揚げされず、ひれだけが「フカヒレ」として中華料理で珍重されています。北海道では総菜として「ネズミサメ」を利用する習慣はないのですが、伝統的なサメ消費国「イタリア」では「スメリグリステーキ」としてその味はメカステーキに匹敵すると、言われています。「ネズミサメ」は「モウカ」とも呼ばれていますが、モウカとはマフカ(本当のフカ)のなまりだそうです。
また、イタリアでは「パロムボステーキ」すなわち「海の子牛肉」として知られている料理がありますが、ここで登場するのは「アブラツノザメ」です。「アブラツノザメ」は春から夏にかけて北上し、秋に南下し集団で大規模な回遊を行います。「上りザメ」は日本海側で4〜6月、オホーツク側で6〜7月、太平洋側で6〜7月に現われます。「下りザメ」は10月に現われ南下して行くのです。「サメ」の眼は丸く小さく体色は灰色で腹面は白色で、お肌は「サメ肌」。美しい魚に比べ、とりえは「フカヒレ」と「肝臓」なのです。
「サメ」は卵胎生で周囲の水温より高い体温を維持しています。特に妊娠個体の体温は高く、「ネズミサメ」で4〜5尾、「アブラツノザメ」で約13尾の稚魚を産むのです。稚魚の体型は親と変わりなく若い時の成長は早いけれど、性的成熟に達すると極めて遅くなるそうです。「サメ」が恋に目ざめる時は早いのだろうかと思いつつまだまだ怖い魚を紹介します。
「らいぎょ」は淡水に住み肉食性で、他の魚をどんどん食べるので日本では害魚。「ベタ」はタイ、カンボジア出身でオスはけんか好きで相手のひれにかみつき倒れるまで戦うという魚世界のライオン。「ビラニア」はアマゾン、ギアナ出身で川を渡る牛などを襲い肉を食べるオオカミ。「電気うなぎ」は馬を倒す800ボルトの電気を出す電撃魚。「やつめうなぎ」は魚に吸いつき肉をそぎ取って食べる吸血鬼。
ところで「怖い魚」、ハブ・まむしのように毒をもっているということで危険な魚がまだまだいます。ブラックリストのトップは死亡率ナンバーワンの「ふぐ」ふぐの多くの種類のものが卵巣や肝臓、血液などに猛毒テトロドトキシンを含んでいます。この毒が恐ろしいものを食べたいスリルを味わった人の血管運動神経を止め、酸素欠乏症を起こさせ命を奪うのです。でもふぐ調理免許を持った人以外、ふぐを扱えないので一応安心です。それにふぐはおいしさでもトップスターなのです。
次に続くメンバーは、容貌魁偉にして背びれの棘に毒線のある「オコゼ」。不細工なのに反し、ことのほか味は美味ですから、さされないよう注意すればだいじょうぶ。また、北海道で「カスベ」と呼ばれる「エイ」も、体の背中央に1本の大きい棘と尾に小さな棘を持つ魚です。その他「アンボイチ貝」「シガテラ」「きぎ」「あぶらぼうず」等は、危険ではあるが出現少ないため、安心と言えます。
さて、人間界でいちばん怖いのは女性?ではないでしょうか。恐妻という単語は存在しますが、恐夫という単語はないのですから。女性より「フカ」と深い仲になった方が健康的。なぜなら、「フカ」すなわち「深海サメ」の肝臓に多く含まれるスクワレンという物質サメエキスを飲めば元気いっぱい。美容と健康にまむしドリンクより効果があるかも知れません。
また、「サメ」より美しい肌を保つために「フカヒレ」料理は最高なのです。年と共に離れゆくお肌の細胞と細胞をひっつけるコラーゲンが多く含まれているのです。毎日鏡にうつった自分の顔を見るのが何といっても怖いのですが、スッポンやへビの活き血を飲むよりは若き精鋭の血に燃える者とつき合うのがベスト。
シャークのように強く、シヤク熱の太陽に負けずに夏をのり切りましょう。盆血より金欠が怖く、バラのとげよりとげのあるひと言、片して赤い血より赤字が怖い夏さかり。細め雪が恋しい季節でありました。(K・F)
横浜魚市場卸協同組合 |