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カレイの煮つけ」,誰にでも好まれ,永遠に消えることのないポピュラーなこのメニューは,定食屋・料理屋・病院・家庭・ファミリーレストラン等,どこにでもあります。カレイと言ったら煮つけ,煮つけと言ったらカレイと言っても良い程,有名なカレイ。その種類は実に多く,日本近海で40種以上,世界では約100種もあります。日本では北海道から九州まで広く分布しているため,地方によって呼び名も味も旬もいろいろです。
市場にも一年中いろいろなカレイが入荷していますが,はるか昔?彼の顔は皆ちがって見えましたが,カレイの顔はどれも同じにしか見えない時がありました。今でこそメイタ・赤地マコ・石ガレイ・ナメタ・赤・黒・ヤナギカレイ,価格も味も釣り物も,また平目の赤ちゃんのソゲとも判別がつくようになりましたが,シロウトはなはだしい時期をふり返ると,何と私はバカカレイと笑えるようになりました。
カレイは「鰈」と書きますが,英名はRIGHT-EYED FLOUNDER,直訳すれば,右目のヒラメ類であり,ヒラメと似ているけれど判別方法は「左ヒラメに右カレイ」が分かりやすく,目のある黒い皮の側を上にし目が左に来たらヒラメ,右ならばカレイなのです。また,ロが大きいのがヒラメ,小さいのがカレイですが,世界の海(アラスカ等)には例外がいるようです。
ところで,カレイの目は生まれた時から体の片側にくっついているのではありません。卵からかえった仔魚は一般の魚同様,目は頭の左右にひとつずつあり,背びれを上にして泳いでいます。ところが体長10ミリ前後に成長すると左目が頭の真上に移動し始め,そのうち体の右側に移ってしまうのです。この変態が起こり,両目が定着すると目のある側に色素が集まり褐色に変化し,その後は白い裏側を下にし,海底生活を行うことになるのです。
海底で,カレイは砂泥にほとんど体を埋め,目だけを出しています。そして回りの色に合わせて体色を変え,変身し,忍者のごとく身をひる返し近づいて来た小魚や虫を食べてしまいます。レインボーカラーには変身出来ずとも茶褐色ならおまかせ,サンタナ顔負けのブラックマジックフィッシュです。
次におなじみのカレイのメンバーを紹介します。旬が冬の「真ガレイ」は,裏側のひれにそって黄色い帯があり,身も厚く味は最高で,煮つけの他に刺身やから揚げにも向きます。「真子カレイ」は黄色の帯なしで旬は初夏,大分県の日出で獲れる「城下カレイ」は美味で有名です。「石ガレイ」は北海道と東京湾に多く,表側に石のように硬い突起が二・三列並んでいます。旬は夏で大きいものは40センチ程で,独特の臭みがあるので値は安いのです。
「メイタカレイ」は菱形で体に厚みがあり旬は春から秋にかけて。小型で両目の間に突起があり,これに触ると痛いので目痛カレイの名があります。「ナメタカレイ」は北海道では「パパガレイ」などと呼ばれ,体は長い卵形で体表がぬるぬるしています。このためナメタの名は「滑多」(なめりた)に由来しています。「柳虫ガレイ」は25センチ程で身は薄く,細長い体の表側に虫食いに似た斑紋があるため,この名がついたのです。旬は冬で子持ちのヤナギを薄塩にし,一夜干しにしたものは最高に美味で,上品でほわっとしたその身は値は高くとも納得のいく味です。
ハンサムな彼と一緒に食べたい高級チャーミングヤナギカレイ。他に赤カレイ・黒カレイ・アサバカレイ・星ガレイ等々・・・それぞれ色・柄・大きさ・味・数知れず,刺身・煮つけ・から揚げ,いろいろな調理法で一年中食されるカレイいろいろ。カレイの好きな日本人はカレーも好きな国民ですが,カレーあれこれと,彼あれこれについてはページ数が足りないのと,種類不足と,研究資料が全く?無いため何年か後に書くことにします。
かつて麻丘めぐみさんが歌っていた曲で「私の彼は左きき」というのがありました。「私の私の彼は左巻き」とか,「私の私の彼は左前」とか,歌ってしまいそうな今の時代,カレンな乙女も,枯れかけたオバタリアンも美味なカレイを愛し,料理の腕をふるいましょう。おいしい料理が家庭を平和に導き,安らぎと,ほほえみを生み出します。インスタントやレトルトパックの手抜き料理では,営業成績や学校の成績を上げられないのではないでしょうか。かの偉大なる作家トルストイも言っているではありませんか。「アンナ,カレイ煮な(アンナカレーニナ)!」と。(K・F)
横浜魚市場卸協同組合 |